HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
森本が僕に抱いている気持ちはどっちなのだろう。
そして久米が雅を見つめるあの目は―――
どちらなのだろう。
――――
――
マンションに帰ってシャワーを浴びると、食事もせずに僕はベッドに潜り込んだ。
ゆずが小さなクマのぬいぐるみを口にくわえて、ベッドに飛び乗ってきた。
クマのぬいぐるみで遊んで欲しいのかと思いきや、ゆずは僕の体の上にクマのぬいぐるみを置くとそれをぺろぺろと舐めて、くぅんと小さく鼻を鳴らした。
このクマのぬいぐるみは―――以前、雅が家から持ってきたものだ。
もらった当初はゆずのお気に入りで、雅に遠くに投げてもらってはそれを追いかけてくわえて戻ってくる。戻ると雅が「いい子、いい子」って言ってゆずの首を撫でていた。
どうやら、ゆずは雅が居なくて寂しいようだ。
僕も―――…寂しい……
ゆずが僕の腕の中に潜り込んできて、目を細めた。
うとうとと瞳を揺らすのを見て、僕もいつの間にかうつらうつら……
その晩―――…またも夢を見た。
あたりは薄暗く、背の高い木々が生い茂っている。
辺りはしんと静まり返って音はなく、出口のない迷路のような森が目の前に広がっていた。
見上げると、あの真っ赤な空が広がっている。
以前、久米メンタルクリニックの壁にかかっていたあの絵―――
それは久米が描いた森だった。