HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~


被服準備室―――!


被服室は主に家政科の生徒が使用している教室だ。


入ったことないけど、以前窓から見えた教室の中にはミシンがずらりと並んでいて、トルソーなんかが飾られていた。


準備室なんて言うから、きっと被服室の近くにあるに違いない。


だけど何で被服準備室なんかに?


そう言えば―――、久米は家政科に用があるとか言ってた……


嫌な予感がする。


「先生、被服準備室だ」


あたしが水月に向き直ると、水月が大きく頷いた。


「行こう。こっちが近道だ」


水月が前を走り出す。ケータイを開いて、走りながらケータイを耳に当てていた。


「まこ!被服準備室だ」


あたしは梶にも電話した。梶も、あたしの短い説明をすぐに呑み込み、すぐ向うということだった。


廊下を走る。


連なる教室を横目で流し、グラウンドで部活に励む生徒たちの掛け声を遠くで聞いた。


廊下にはあたしたち二人の足音が響いている。


乃亜、乃亜……



乃亜―――!!!



気持ちだけが急いて、あたしの足元がもつれる。


転びそうになったところを、水月の腕が支えてくれた。


力強い腕だった。


久しぶりに触れられる―――水月の手はやっぱり心強くて、焦る気持ちをほんの少しだけ軽くしてくれた。







―――“被服準備室”と書かれた小さな部屋に辿りつくと、小さな小窓から中の様子が伺えた。


慌てて中を覗くと、





乃亜と―――久米が、居た。






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