HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
二人は何やら言い争ってる雰囲気だった。
緊迫した雰囲気が漂ってくる。
久米―――!!
何で……
何であんたが!
やっぱりあんたがストーカーの犯人なの!?
久米は乃亜を入り口に追い詰め、こっちからだと後ろ向きの乃亜の様子は分からないが、彼女に顔を近づけている。
薄暗い部屋に久米の挑発するような笑顔だけが妖しく浮かんでいた。
「やめて!」
乃亜の叫び声が聞こえて、水月が表情を険しくさせる。
「楠!」
水月が扉に手を掛けるより早くに、あたしは扉を蹴り上げた。
ガンッ!
鈍い音がして、準備室の中の二人がびっくりしたように目を開いてこちらを振り向く。
水月も驚いて目を開き、扉に手を掛けたまま固まっていた。
扉越しに久米を睨んだ。
「出てきな」
目でそう訴えると、久米は薄く笑い乃亜からゆっくりと離れた。
ガチャガチャっ
慌しく乃亜が鍵を開けて、中から飛び出してくる。
「雅!」
乃亜は可哀想なぐらい全身を強張らせ、震えた声であたしを呼び、安心したように抱きついてきた。