HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「水月、とりあえず楠を保健室に連れて行こう。
怪我はしてないようだが、興奮してるみたいだから、少し休ませた方がいい」
最初に行動を起こしたのは保健医だった。
あたしに抱きついたまま泣きじゃくっている乃亜を、丁寧な動作で引き剥がすと乃亜の両肩を抱いた。
「大丈夫か?保健室まで歩けるか?」
乃亜は嗚咽を漏らしながらも、何とか頷き保健医に促され歩き出した。
そしてあたしは、まだ状況がつかめていないだろう困惑した梶を見て、
「梶、あんたも乃亜についててあげて」
と保健医たちの方を振り返る。
梶は何か聞きたそうにしていたが、それ以上は深く言わずに大人しく保健医と乃亜の後についていく。
それでもまだ動こうとしない水月を見て、あたしは眉を下げた。
「……神代先生も…」
「だけど、鬼頭」
「あたしなら大丈夫。久米にちょっと話があるから」
早く行って。
じゃないと、水月が傷つけられるかもしれない。
乃亜がされたこと以上に、酷く―――
そうなる前に、早く―――……