HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~


乃亜の肩は細かく震えていた。


「…みやび…ぃ…」


ヒックヒックと声を上げて、乃亜があたしの肩先で泣いている。


あたしは泣いている乃亜を宥めるようそっと肩を撫でると、被服準備室からゆっくりと出てきた久米を睨んだ。


「久米!一体、楠に何をしたんだ!」


水月が珍しく声を荒げて、あたしより早く久米に聞いた。


久米は薄く笑ったまま水月を眺めて、そして楽しそうにあたしに視線を移す。


そのときだった。


バタバタと慌しい足音が聞こえて、


「水月!楠居たか!?無事か!?」


と、保健医が姿を現した。


保健医とほぼ同時期に梶も反対側から駆けつけてくる。


「鬼頭!乃亜ちゃん見つかった!?」


そして二人とも、泣きじゃくっている乃亜を抱きしめているあたしと、対峙するようにドアにもたれかかっている久米を交互に見て、何事か目を開いていた。





「全員お揃いで」





久米がおもしろそうに一同を見渡し、口元に笑みを浮かべる。


こいつ―――……


あたしはぎゅっとケータイを握り、手のひらの中でケータイがみしりと音を立てた。


それは乃亜が受けた恐怖であり、あたしの怒りでもある音。


「神代先生、林先生と一緒に乃亜を保健室に連れてって」


あたしが水月の方を見ずに低く言うと、水月が少しだけ困惑したようにあたしの肩に手を置こうとした。


だけど肩に手を置かれる前に、あたしはその動作を遮るように声を上げた。



「早く!」





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