HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
久米は浅く呼吸を繰り返し、喘ぎながらもぎこちなく笑顔を浮かべる。
「やっと……やっと本性を表わしたね。神代センセー」
挑発されていると言うことはわかっていた。
だけど僕の猛り狂った感情は、冷静になるどころか、怒りは鎮まることなくさらに獰猛さを増している。
腕を僅かに吊り上げると、久米の首が絞まって、久米はとうとう笑顔を浮かべる余裕すらなく苦しそうに顔をしかめた。
「いいか、これは忠告だ。彼女に指一本触れてみろ。
右手どころか、今度は左手まで失うことになるぞ」
久米の耳元に顔を寄せ、しっかりと言い聞かせるようにゆっくりと囁くと久米は目を開いて横目で僕を見た。
そのときだった。
バサバサっ!
何かが床に落ちる音がして、音のした方を見ると―――階下に
―――森本が突っ立っていた。
口元を両手で覆って、その顔色は薄暗がりの中でもはっきりと見て取れるほど青白くなっていた。
呆然とした僕と視線が合うと、
「な、何してるんですか!先生っ!」
彼女が階段を駆け上りながら、走り寄ってきた。
それでも僕は久米から腕を離さなかった。
腕に込めた力を維持していると、久米が僕の腕の中で再び苦しそうに息をもらす。
「や、止めてください!!久米くんが死んじゃう!」
必死に叫ぶと、森本は僕の腕にしがみついてきた。