HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「ねね、ちょっと聞いていい?」
岩田さんが少しだけ探るように目を上げて、あたしを見てきた。
「いいよ。何?」
ボールを拾い集めていたあたしが答えると、
「鬼頭さんて神代先生と仲が良いよね……」
ポーン…
あたしの手からバレーボールがすり抜けて床にバウンドし、遠くの方へ転がっていった。
どういうつもりで聞いているのだろう。
あたしたちの関係を探っているのだろうか。それとも―――
「もしかして岩田さんも、あの噂を真に受けてるの?」
ちょっとそっけなく答えると、
「あの噂?」と岩田さんは全然気を悪くした様子を見せずに首を捻った。
とぼけているのだろうか。
いや、そんな感じはしない。岩田さんは興味があることに対して何でもストレートに聞いてくる感じだったから。
「あたしが先生たち相手に売春してるって噂。岩田さん知らない?」
「は!!?知らないし!!」
岩田さんは目を丸めて口を大きくあけた。
この様子だと岩田さんは本当に知らなかったんだろう。
あたしは噂話の一部をかいつまんで岩田さんに聞かせた。
別に隠すことでもないし。実際にしてるわけじゃないから堂々としてれば良いし。恥じることもない。
岩田さんはあたしが話している間中、ずっと目を開いてあたしを凝視していた。
一部始終を話し終えると、
「てか何、その噂!!冗談にしても酷すぎる!!」
岩田さんは声を荒げて怒鳴った。
締め切った球技場にその声が響いた。