HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~


「岩田さんは信じてくれるの?」


あたしがボールを拾いながら聞くと、岩田さんはその場で立ち止まったまま、


「信じるもなにも、そんなのデマじゃん。ってかありえないし!」


といきり立った。


正直、ここまで驚いて怒ってくれるとは思わなかったから、あたしの方がびっくりだ。


岩田さんは深呼吸を二回、三回と繰り返すと呼吸を整えて、ボールを拾い出した。


「ってかさ、鬼頭さんて周りの目気にしないじゃん。一人で居ても平気っぽいし。


あたしさ、一年の頃から鬼頭さん凄いなって思ってたんだ」


一年?


あたしは一年の頃岩田さんと同じクラスじゃなかった。


同じクラスの子の名前と顔も一致しないのに、ましてや他クラスとなると完全別世界。


ってことは岩田さんが一方的にあたしのことを知ってただけか。


「ってか、あたし岩田さんに凄いって思われるようなことした?」


特別に目立ったことはしてないつもりだけど。まぁ階段事件で噂にはなったけど。


あれはある意味「凄い」部類に入るのかな。




「鬼頭さんは一年の頃いっつも一人でさ、お弁当食べるときもトイレ行くときも、移動教室も誰とも一緒じゃなかった。


いっつもけだるそうにしてて、ポーカーフェイスで、でもそこが何か男子に人気あって。


『あいつ、かっこいいよな』とか聞くと、


『どこが?友達も居ない寂しい女じゃん』って、


ちょっとやっかみみたいなものを感じてた。


あたし以外にもそうゆう風に思う女子は多くて、って言うか大半は彼氏や好きな人を鬼頭さんに取られたって思い込んでる女子だけど


直接関わり無いのに嫌がらせとかして」



嫌がらせ……


あぁ、確かにあったね。


靴箱に死のメッセージが入ってたり、すれ違いさまに「ブス」とか言われたり。


そんなこと慣れてるし。今更ながらたじろぐこともなかったし、もちろん落ち込んでもいない。







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