HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



「先生、このまま諦めていいの?」


急に、結ちゃんに問われ、


でも僕は


「何を?」と返さなかった。


聞かないまでも分かっている。




諦めるのは簡単だ―――……


今は辛いかもしれないけど、やがてときが経てば傷を癒してくれる。


雅が卒業したら、僕たちは何の繋がりも無く全くの他人となって。


やがて互いの存在を忘れていくのだろうか。


まるで最初から何もなかったように。




「そんなのいやだ」




僕はきっと最初から諦めるつもりなんてなかったんだろう。


殆ど考えることなく、ぽつりと漏らしていた。




~♪Don't bend, don't break, baby, don't back down.
(信念を曲げるな、挫けるな、諦めるなよ、ベイピー)




進め




進め



ひたすらに―――





迷うな


迷うな



貫き通せ




この歌の通り―――ひたすらに突き進むことを



諦めてはならない。



一方的な気持ちを押し付けるのは、彼女をストーカーしている男と同じことかもしれない。


だけど押し付けるのではなく、


彼女ととことんまで解り合いたい。



だって雅は―――





僕に嘘をついている。










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