HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
プツ…ツーツー…
通話は一方的に切れて、僕は深くため息をついてケータイをテーブルに滑らせた。
「なんか…変なタイミングに来ちゃったみたいだね…
すみません」
結ちゃんが何となく居心地悪そうに俯き、
「いや、君のせいじゃないよ」僕は慌てた。
運の悪さを呪ったが、彼女のせいになどできない。
だが右門 篤史は「次回」と言った。だから「次」があるってことで、
僕が久米の秘密について沈黙していたら、その「次」はそう遅くない時間にやってくるだろう。
向こうも焦っているはずだから、尚更だ。
「ごめん、変な態度で……あ、どっか出かけるの?良かったら」
僕は向かい側の席を勧めた。
「うーん…これから合コン。待ち合わせの時間までちょっとあるから時間潰そうかと思ったの」
合コン…
「ああ、それで。いつもと雰囲気が違って見えたんだ」
「え?」
「いつもより大人っぽい。でも似合ってるね」
僕が笑いかけると、結ちゃんは白い頬にちょっとピンク色を浮かべた。
「別に…キバッってるわけじゃないよ。
これしかなかったの」
「女の子は大変だね。でもオシャレするのも楽しいだろうね」
僕がメニュー表を進めると、
「へ…変じゃない…?」
と、結ちゃんが恥ずかしそうに目だけを上げて聞いてきた。
「全然変じゃない。可愛いよ」
僕が思わず笑うと、
結ちゃんはまたも顔を赤くして
「だからそうゆう台詞は彼女だけにしなって…」
口元を手の甲で押さえた。