HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~


少なくとも、ちょっと前、結ちゃんは別れた彼氏に言い寄られ、その彼氏を取ったと言うのは真実(ホントウ)だった。


今更ピアス一つで僕に嘘を着く意味が分からない。


何よりシールの存在を教えてくれたのは結ちゃん本人だ。結ちゃんは森本からシールの一枚を失敬した、と正直に言ってくれた。それで森本があの薔薇のシールを持っていたのは確実だが。


「でも、分からないな。二年前て言えば森本と鬼頭に接点なんてない筈だぜ?」とまこが言い


「シールの存在なんてストーカーの実行犯が、首謀者…?て言うのか、少なくとも今回の件に加担しているのは確かだけど、そいつに言ったのかもしれない」


と楠 乃亜が言った。


確かに楠の推理に頷けるし、そう推測するのが妥当だ。


だから、僕はこうしてハイブリットティーガーデンに来ている。


さっきの作戦をおさらいしていると、まこと梶田の乗った車が店に到着したようで、僕の横にまこが車を収めた。


「ここがその店?普通の雑貨屋に見えるけど」と梶田が店の外観をしげしげと眺めている。


「二年前のストーカーが、二年前久米にこの店のシールを貼って脅迫文を送ってたってことだろ?」と奇異なものを見る目付きで店を無遠慮に眺めている梶田。


僕もそう思った。いかにも女の子受けが良さそうなこの雑貨屋に男一人だけで来るだろうか。


実際、店内に入ると店員はすぐに「いらっしゃいませ~」と歓迎してくれたが、男三人の来店で流石にちょっと訝しんでいる様子。


店内も外観と同じく可愛らしい雑貨が所狭しと飾られていた。センスが良く女の子の購買意欲を掻きたてる感じだ。客として来ていた女子大生らしき二人組が「これ可愛い!」と花柄の手鏡を手に取っている。


僕はレジに立っていた店員さんに手紙から切り取ったシールを見せ


「これ、この店で売ってるって聞きましたが、今もあるんですか」と開口一番に聞くと


「ええ、取り扱っていますが……」と益々不審そうに目を上げていて、僕の横からすぐに


「こいつの彼女がここのシールをケータイに貼ってて、気に入ってらしいけど最近ケータイが壊れて新しいのに着けたいって。で、こいつは彼女にサプライズでシールを送りたいって」


まこがにやにやして僕の肘を小突き、まこのスラスラ出る大ウソに店員さんも納得したように大きく頷き


「なるほど。このシールは大人気で五年程前からこちらで取り扱ってるものなんです」と気を良くしたのかすぐに売り場に案内してくれた。


僕たち三人はそろって顔を合わせほっと息をついた。



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