HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
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電話を切って慌ただしく結ちゃんの居るファミレスに向かった。結ちゃんはこないだと同じ…右門 篤史と取引した所のテーブルに座っていて、紅茶が入っているのであろうティーカップを傾けていた。淡いグレーのパーカーにふわふわした素材の白くて長いスカート。
う゛~ん…大学生って私服だから今日が学校かどうかいっつも分からない。
「……お待たせ」声を掛けると結ちゃんがちょっとびっくりしたように目をまばたき、その節に結ちゃんの白い耳たぶで、星のモチーフのキラキラしたピアスが揺れる。
「どうしたの、幽霊にでも会ったような顏して」僕が無理やり笑顔を浮かべると
「うん、ちょっと…びっくりして…だって早かったし」と結ちゃん腕時計を見る。
「飛ばしてきた。制限速度30キロオーバー」わざと大げさに言うと
「へぇ、やるね」と結ちゃんは笑う。
「や、嘘だから」
「分かってるよ。だってここはエミナの学校からそう離れてないじゃん」結ちゃんはまた笑った。
でも―――何でかな…今日の結ちゃんはすごく悲しそうな笑顔で、酷くぎこちない。
結ちゃんの手元には当然ながら飲み物ののカップしかない。
僕は彼女の向かい側に腰を降ろし
「夕飯は?もう食べた?」と聞くと、結ちゃんはゆるゆると首を横に振った。
「そっか、僕もまだなんだ。作る予定もないしここで済ませちゃおうって…何か食べる?」とメニュー表を渡すと、ちょっと恥ずかしそうに結ちゃんがメニュー表を受け取った。
僕が渡したメニュー表には『今月のイチオシ』と言うタイトルで飾られたメニューが華々しく掲げられていて、しかし『丼フェア』と書かれていたタイトルを見て顔をしかめた。
メニューは定番のかつ丼や親子丼等からはじまって、今流行りのローストビーフ丼やアボカドまぐろ丼とか、彩が豊だ。
僕の表情を読み取ったのだろう結ちゃんが
「何?先生あんまり好きじゃない?」と聞いてきて
「……うん、まぁ…嫌いじゃないけど、敢えて手を出さないって言うか」
「何で?」
「うーん…何て言うか、僕の口の中で融合してくれないんだよね。分かる?かつ丼だったらご飯とかつ煮を分けてほしいって言うか。そもそも酒飲みだからあんまご飯とか食べないし」
「何それ、融合て?」結ちゃんは声をあげて笑った。今日はじめて心からの笑顔だと思えて、ちょっとほっとした。