HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
当然ながら、森本のお母さんは驚いたように目を瞠っていて
「結香、それに…神代先生?」僕を呼ぶときお母さんはちょっと怪訝そうに…いっそ警戒するような視線を寄越してきて「どうして一緒に?」と視線が語っていた。
「そこで偶然会って」と僕は取り繕ったように言い、でも多くを説明している暇はない。
「すみません、この子が風邪をひいてしまうので」とモカを指さすと
「あら、いつの間に」とお母さんは目をぱちぱちさせた。その反応はあまり感心が無いように思えた。
お母さんのその反応が気に入らなかったのか結ちゃんがモカをきゅっと抱きしめたまま
「どうして!どうして外に出したのよ!」と怒鳴り声を挙げた。
「知らないわよ。勝手に出て行ったんでしょう」とお母さんは冷たく言い放つ。
「モカが鍵を開けて勝手に出て行ったって言うの!そんなことあるわけないじゃん!どこか開いてたんだよ」
結ちゃんが勢い込み
「何なの、帰ってくるなりヒステリーで」とお母さんがムっと顔をしかめ
「ヒステリーはお母さんの方だよ!エミナばっかりで。反抗的なあたしのことはどうだっていいけど、モカは何の罪もないんだよ!」
「たかが犬でしょ。やめてよ、こんな所で喚くのは。エミナは気が立ってるのよ、刺激しないでちょうだい」お母さんは鬱陶しそうに顏を歪め『たかが犬』と言った言葉に僕もムっとなったが、それを押さえて
「あの…お母さん、結……香さんのこともちょっとは…」
と親子の間に入って仲裁しようにも
「関係ない人は口出ししないでください」と冷たく言い返されてしまった。
「関係なくない!先生はモカのこと凄く心配してくれたんだよ!」
「もう!何度言ったら分かるの!エミナが二階に居るのよ!」お母さんも声を荒げ
「あの…」僕が間に入ろうにも二人は僕を無視して怒鳴り声を挙げている。
口喧嘩がヒートアップしたのか、お母さんは声を荒げた。
「何であんたはそんなに反抗的なの!
勉強もできない、言うことは聞かない!あんたはこの家の厄介者なのよ!
あんたなんて
産まなきゃ良かった!」