HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~

中川は僕の不自然な態度に不審な顏をせず、鳴り続けるケータイを取ることをしない僕に、初めて


「出ないの?」と聞いてきたが


「あ、うん…僕の方も姉からだ。面倒だから後で掛けなおすよ」と何とか作り笑いを浮かべる。笑いながら額を嫌な汗が浮かび上がる。その汗はまだ雨で濡れていた水滴とまざり僕の頬を滑り落ち、その動揺を悟られることはなかった。


僕の手の中でしばらく震えてた着信は、やがて消えた。


タオルで一通り雨粒を拭って、お姉さんはご丁寧にも傘も貸してくれると言う。僕はきっちりとお礼を言い、そそくさとその場を去った。


傘を差しながら、結ちゃんを下ろした場所……森本家の近くに不自然に路駐してある車に向かうと違反切符も貼られず、そのくすんだ雨の中、何の変哲もなくどんよりと位置していた。


車に入り、結ちゃんと以前話したことのある公園まで車を移動させ、僕は雅に折り返しの電話をした。


相手は1コールもしないうちに出た。


「も……もしもし…」声が変な風に裏返ったのは、さっき中川に着信を見られたかも、と言う動揺からだった。


『もしもし?水月、無事?』と短く聞かれて、僕は大きく頷きながら「うん、大丈夫。無事だよ。ちょっと事情があって連絡が遅れてごめんね」と素直に謝ると、雅の方も深く突っ込んでくることなく、『良かった』とちょっとほっとしたような声で言われ、何だかいたたまれない気持ちになった。


雅が心の底から心配してくれていたのが、彼女の一言で分かった。


それなのに僕は―――まだ秘密を作ろうとしている。


ただでさえ、僕たちの関係はあやふやで曖昧なものなのに、隠し事をしてさらに溝を深くしたくなかった。僕は結ちゃんとあったあれこれを話そうと決意した。


ただ、どうあっても結ちゃんに頬とは言えキスをされたことは言えそうにもないが。


「あのね、雅―――」


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