君のためにできること
願い
秋の風が頬を伝い、冷たい雨を地面に落とす。地面は雨を啜り、斑点を作る。行き場のない野良猫達は、一箇所に集まり、何かを求めるように、鳴いていた。


俺と、まことは病院の屋上で話していた。雨が降り、人の気配はなかった。


「優、なつきのことなんだけど」と、まことは言った。


「俺、なつきの気持ちわかったよ。俺じゃ、到底、優の相手にはならない」


俺は街を眺めて黙っていた。


「負けたよ、優。お前になつきを任せた。俺はまたどこかの国でも行くかな」


「まこと・・・」


「じゃあな」


まことは、俺の前から駆け出した。


「なつきを、幸せにしろよー!」


俺は、うなづき、空を見上げた。また、なつきと、この空の下で、海を見たい。
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