揺れない瞳
『わかったわ。私には何も言えないし、不破さんの好きにしていいのよ。
提案なんだけど、いっそ同じウェディングドレスをもう一着作ってみない?
なんなら、会社の製作室貸すわよ』
「え、私みたいな一般の学生が使っても…大丈夫なんですか?」
『大丈夫よ。不破さんが通う大学とうちの会社は密だからね。
コンクールやらで才能を発揮してる子は、卒業前からうちで確保する為に出入りも可能にしてるんだ。
あ、不破さんにはうちの会社に入社するように押し付けたりしないから安心して。
奏にもこないだきつく怒られたから。ふふ』
「あ…」
芽実さんの旦那様の奏さんが、優しそうに芽実さんを見つめていた表情を思い出す。
私の作ったウェディングドレスを気に入ってくれた勢いと高ぶる気持ちを隠さずに色々と話す芽実さんをたしなめながらも、愛しそうに体を寄せ合っていた。
そんな二人の姿を目の前で見せつけられて、羨ましいなと思わずにはいられなかった。
そして、また痛い想いが体に湧き上がってくる。
さっき川原さんと話していた時に感じた、どんなに私が望んでも、欲しいものが手に入らない切なさが再び私を襲ってきて、心は痛くなる。
けれど、どんどん落ちていきそうな、そんな気持ちを振り払うように。
「作り直した作品でショーに臨んだとして、それは大丈夫なんですか?」
ほんの少し早口で言っていた。
『問題ないわよ。最終審査で展示されていたからショーに出すってわけじゃなくて、私が気に入ったから出て欲しいの。作り直す事は、重く考えなくていいわよ』
「そうですか……。じゃあ、ドレスは貸す事にします。
でも、作り直すかどうかは……少し考えてみます」
実際、同じ作品をもう一度作るなんて、自分の気力が続くのか自信がなくて、声のトーンも低い。
そして、しばらくして会話を終えた携帯を見つめながら、私の口からは、ため息がでた。