揺れない瞳




「ここで大丈夫です。すぐだから…」

最寄の駅の改札を抜けると、もう目の前が私の住むマンンション。
高層マンションにありがちな圧迫感を与えてるのが嫌だけど、夜道も安全だからという理由で、父親が決めて。

経済的にお世話になっている私には、何の意見も言えなくて受け入れるしかなかったけど。
本当は。

一人暮らしには広くて寂しすぎるこのマンションは、なんだか自分の部屋だという実感がなくて、落ち着かない。

「へえ。家族と住んでるの?すごい高級なマンションだな」

見上げる央雅くんに、何も言えずに曖昧に笑う。

聞かれた事には答えずに、央雅くんの綺麗な顔を見つめながら、ほんの少し胸が痛いなあって感じる…。

もう少し、話をしたかったかな。
偶然に、私が作ったひまわりのストラップを携帯につけてくれてるなんて、本当に嬉しいし温かくなる。

その温かさをこのまま感じたいなあって、思う。

ほんの少し。

でも、今そう感じるからって未来がつながってるわけじゃないから。
明日になれば、それぞれに普段通りの生活が始まる。

お互いの時間にお互いが感知しない毎日が。

流れのままに央雅くんと繋いでる手を見て。

ゆっくりと、そっと。

離した。

思ったより、寂しくなったのは、今日だけ。




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