揺れない瞳


その夜、央雅くんと一緒に帰って来たのは、日付が変わる少し前。
普段と同じように手を繋いで、時々見つめ合いながらの帰り道は、あっという間だった。
央雅くんと気持ちを通わせた事で、繋いだ手の温かさがこれまでと違って感じられたのは、気のせいかな。

たとえ、いつものように、斜め後ろからの央雅くんを見つめるだけの帰り道だとしても、寂しさを感じる事はなかった。

央雅くんが気持ちを伝えてくれたというだけで、幸せを感じられる私は、単純だな、と思える。私を好きだと言ってくれた央雅くんの言葉は、私の内面を変えていく魔法の言葉。
決して、誰からも貰えないと諦めていたその言葉は、私の心に響き続けている。
その響きが、私の心から消えないように、ずっと大切にしようと思う。

「まだ、離れたくないんだけど」

私のマンションの前に着いた時、央雅くんがぽつりと言った。
今まで、こうして送ってくれた時には、遅い時間だからと言って、部屋には寄らずにあっさりと帰っていたけれど、今日に限っては、繋いだ手もそのままだ。

「遅い時間だけど、部屋に寄ってもいいか?」

央雅くんから、まっすぐ見つめられて、私と一緒にいたいと言われて、断るなんてできるわけがない。
私は、央雅くんの視線を受け止めたまま、頷いた。

その瞬間、硬かった央雅くんの顔がほころんで、肩の力が抜けたような気がした。


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