揺れない瞳

「央雅くん……?」

「俺、確かに結乃が背負っている苦しみや寂しさを、芽依ちゃんが持つそれと重ねてた。俺が芽依ちゃんを楽にしてあげられなかった後悔を、結乃で果たそうとしてたのは事実なんだ……」

まっすぐに結乃を見て、本当の気持ちが伝わるように言った。
黙って聞いてくれる結乃は、苦しげに口元を引き締めただけで、俺の言葉を待ってくれる。

「でも、結乃を知っていくにつれて、俺は結乃自身に惹かれていったんだ。
芽依ちゃんとは違う、強さと優しさを持ってる結乃が好きでたまらなくなった。
他の男と話す姿に嫉妬もしたし、結乃以外の女に興味もなくなったし。

だから、結乃を手離したくないし、俺のものにしたいから。

……結乃の成長に俺が邪魔だとしても、もう離れない」

自分で話しながら、自分の心を知っていくようだった。
ここまで結乃に対して強い想いを抱えていた自分に気づいて、その瞬間から不安になる。

一人の女に気持ちを寄せる苦しさを、初めて知った瞬間だ。
< 255 / 402 >

この作品をシェア

pagetop