揺れない瞳
央雅くんから注がれる愛情を、どう受け止めていいのかわからなかった。

視線や言葉を返せばいいのか、どこまで信じていいのか、私はどれだけ幸せを感じればいいのか。

わからなかった。

今でも、確実にわかったかと聞かれれば自信はない。

それでも、不安な気持ちを隠さないで、加絵ちゃんに相談して答えを求めようとしていた不安定な私からは抜け出せたような気がする。

央雅くんから私に与えられる深い愛情は、本当に奇跡的で、そしてその奇跡に感謝するだけではだめだと気づく。
感謝しながらも、私が持つ央雅くんへの愛情をしっかりとわかってもらわなければいけないんだ。
央雅くんは、自分の言葉や態度を通じて、私の気持ちを温かく幸せなもので満ちるように真っ直ぐに向かってくれる。
……央雅くん自身の照れくささも含めて。

そして、私は幸せをかみしめる。
同じように、央雅くんにも幸せになってもらいたいと思う。

私も央雅くんを大切に思っていると、央雅くんに実感してもらわないと、この奇跡は消えてしまう。

央雅くんが与えてくれる愛情を素直に受け入れて、同じだけの愛情を、しっかりと返さなきゃいけない。
照れるだけじゃだめだし、経験不足を理由に恋人を幸せにする努力を怠ってはいけない。

こんな積極的な気持ちを持つなんて、ほんの少し前までの私には想像もできなかった。何がきっかけで、私はこんな風に考えられるように変わったんだろう。

好きな人ができると、何もかもが変わるのかな。
それが、愛なのかな。

その日の晩、慣れない幸せに浸り続けていた私は、携帯にメールが届いている事に気づかなかった。

父から届いたメールを知らせるライトが、一晩中点滅していた。
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