揺れない瞳

結乃に会った翌日、夏芽が熱を出して病院に連れて行きたいから車を出して欲しいと芽依ちゃんから連絡があった。
旦那の夏基さんは出張で留守らしく、不安げな芽依ちゃんと、熱で顔を真っ赤にした夏芽を車に乗せて連れていったのは、母さんが勤務する病院。

小児科医ではない母さん自身はその時の夏芽には関係のない医者だけれど、芽依ちゃんは安心感があるようで、母さんの勤務する病院に連れて行った。

『風邪だね。お腹もこわしてないし、吐くこともないから様子をみてみようか』

おとなしく診察を受けた夏芽をあやしながら、芽依ちゃんが安心したように小児科のドクターと話をしていると、母さんが診察室に顔を出した。

「久しぶりに会ったのに、お熱があるなんてかわいそうにねー」

芽依ちゃんの腕の中の夏芽に話しかける母さんは白衣のまま医者の顔だ。
それでも声だけはしっかりおばあちゃんになっているのが妙にしっくりくる。

俺や芽依ちゃんが小さい頃は仕事が忙しくて子育ては殆ど手抜きだった母さん。
学校行事や懇談会には、芽依ちゃんが代理で来てくれたことも少なくなかった。

芽依ちゃん自身もまだ学生だったにも関わらず、嫌な顔もせずいつも気にかけてくれたおかげで、寂しい思いを感じずに大きくなった。

今でも母さんの忙しさは相変わらずだけど、やっぱり孫はかわいいのか、時間の許す限り会いに行っているらしい。
孫に会うという口実で、実際は芽依ちゃんと一緒に過ごせなかった時間を取り戻そうとしてるんじゃないかと思う。
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