家族になろうよ!
去年から、一・七センチしか身長が伸びていなかった。
何の冗談だ。
成長期のはずなのに、この伸び率。
絶望した俺は、身体測定後の運動能力テストも散々な結果に終わった。
着替えの遅い女子のせいでホームルームが始められない男子だらけのむさ苦しい教室の片隅で、俺はどこかの燃え尽きたボクサーよろしく項垂れていた。
「立て!立つんだ斗馬!」
「だまれ百七十六・八センチ」
「すみません……」
謝ってんじゃねーよ、アホ凌。
余計惨めになるだろうが。
ただでさえデカいのに、ますます俺より成長しやがって。
「何を食ったらそうなるんだよ」
「牛乳は嫌いだよ」
これまで積み重ねてきた努力が今、さらっと踏みにじられたな。
もう、いっそ本当に灰になってしまいたい。
「いいじゃない、斗馬クンはあの早乙女さんに気に入られてるんだから」
気に入られてる?
たしかに舞い上がってしまった俺は、そう感じなかったと言ったら嘘になる。
でも冷静になってみると、二回会話しただけだし、彼女は誰にでも優しいらしいし。
彼女にとってもまた俺は『可愛い』マスコットでしかないのだろう。
異性と接している感覚がないから、話しやすいだけだ。
この解釈の方が、しっくりくる。
名字だけは、たしかに気に入られているようだけれど、それ以上の感情があるかもしれないなんて考えるのはおこがましい。
「自信持っていいと思うんだけどなあ」
この身長で自信を持てという方が無理な話だ。
他人事だと思って。