LOVE STORIES
「うわあ、寒い」

 店の外に出ると、来た時よりもだいぶ気温が下がっていた。裕子は手をこすり合わせている。

「でも、ほら、イルミネーションきれいじゃない?」

 美帆は街路樹に飾られてたイルミネーションを指差す。

「本当だ。すっげえ」

 潤一も子供みたいにはしゃぐ。

 イルミネーションに見とれながら歩く二人を追いかけるように、拓也と裕子は並んで歩いていた。

「きれいだね」

 裕子も見上げながら言った。

 拓也はイルミネーションよりもその裕子の横顔をずっと見ていた。

「そんなことよりも寒いよ」

 拓也はそう言ったが、全く寒さは感じていなかった。

 初めて握った裕子の手は何よりも暖かかったから。
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