シェリの旅路

月夜の幻

キミはジオの胸ポケットの中で

眠りについた。


ジオは殻に閉じこもったまま

考えていた。



―ヴァネッサの言う通りだよな。

オレはミルに嫌われるのが嫌で

いい男、優しい男を必死に

演じていつからかミルに本当の

自分を見せなくなってた。

ミルが遠くなっていったって

感じたのはオレ自身がオレから

遠くなっていったから

なんだろうな。


―本当オレって馬鹿だよな。

ミルを幸せにすることなんて

はじめから無理だったんだ。

勇気のないオレにはミルは

高嶺の花だったんだ。


―オレとミルは不釣り合い

だったんだ。そう、初めから。

村を出てもう一年だ。

……いい加減忘れよう。

忘れなきゃこの苦しみからも

逃げられないし前に進めない。


―そう簡単に忘れられないから

1年もひきずってんだろ!

いっそのこと死んでしまいたい。

……死のうか。

死んだら楽になるかもしれない。


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