他がために悪はある
八つ当たり気味な耳障りな声で、点滅が止む。
向かってきた拳を刃で防いだ。
男の中指から剣が通り、不格好な断面図を見た。無造作に手を引っ込める男に続くように、彼女は拳を奮った。
「人を殺すならば、正義を捨てろ!持っていても邪魔なだけだ!第一、こんな私たちを綺麗という奴がいるはずがない。いるとすれば――」
倒れる男に先ほどの仕返しか、彼女がまたがった。
「本当の殺しを知らない、優しい世界で生きた奴だけだ!」
がすん、と剣が深く男の喉につきささった。
血の泡をだらしなく出して、目を泳がせている。