Liberty〜天使の微笑み
第3話 増える痛み


 橘くんたちと会ったあの日から、カレが口を利いてくれない。

 理由は簡単。私があの日の帰り、カレからの電話に出なかったことが原因だ。気付いてすぐに電話したけど、カレが電話に出ることはなかった。

 もう一週間が経ち、今日もまだ、カレと連絡をとれない。メールや電話は繋がるけど、返事は一切無い。


「――――はぁ~」


 絵を描く手も止まってしまうほど、私の頭には、どうしたら許してもらえるのだろうという考えが溢れていた。


「く~れ~は! ほら、食堂行くよ?」


 どんっ、と勢いよく背中から抱き付かれ、ようやく美緒の存在に気が付いた。

 そっか、もうお昼なんだ。

 片付けて食堂に行く間も、私はうわの空で。


「それで海(かい)ったら……って。紅葉、聞いてる?」

「えっ……?」

「今の話、聞いてないでしょ? っていうか、今日は特に気分ダウンいてない?」


 やばっ……気付かれるなんて、相当落ち込んでるんだ。

 他のことはバレても、このことは相談するようなことじゃないし。

 何より、自分でどうにかしなくちゃ。


「ほら……私、あの日が近いと、気分がこうなるじゃない?」


 嘘とはいえ、さすがに他の生徒もいる手前、生理とは言えない。だからそれとなく、濁して伝えた。


「――あぁ! な~んだ、それなら早く言ってくれればいいのに。心配するでしょ?」

「うん、ごめんね。そんな言うことでもないと思って」

「だからって、無理しちゃダメよ? 最近、いっつもアトリエにこもってるじゃない」

「無理してないよ。期限も近いから、ちょっと追い込みかけてるだけ」


 本当は違う。

 絵なんてまだ下書きだけだし、カレのことが気になってしょうがないから、それを忘れるために没頭しているようなものだ。
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