Liberty〜天使の微笑み


「お前が言うこと聞かないから、アイツがつけあがるんだぞ!? いっちょ前に気なんて使うんじゃねぇーよ」



 今だけ。

 今だけ、我慢すれば……。



「ごめん、なさい。まだ、今日はいるから」

「当たり前だ。――お前は、最近アイツと遊び過ぎなんだよ」

「あいつって……?!」


 目が合った瞬間、体が倒された。畳に押し付けられ、カレはどこか悲しいような、恨めしいような……そんな憂いを含んだ目で、私を見ていた。


「朔夜と、いることが多いだろう? 俺より……アイツがいいのか?」


 一緒にはいるけど、それは、今に始まったものじゃあ。


「違う、よ? だって……好きなのは、純さんだから」


 橘くんは……違う。

 だって、好きだとしても、それは友だちとしてだし。



 ……たまに。



 ほんの一瞬だけ、あの時の人が、橘くんだったらって考えるけど。

 あれは純さんだったし、手紙に書いてあったのは、間違いなくあの時にいた人しか知らないことだから。



 ……そんなこと考えるなんて、酷いことだ。



「みんな、アイツばかり見るんだよ。賢くて、気が使えるアイツを……」

「そんな……純さんだって、似てっ」


 ぎゅっと、握る手に力が入る。

 私を見つめる目はとても怖くて。

 まるで……蔑むような、そんな視線で私を見ていた。


「そう言って、周りは俺でなく、アイツを選ぶ。――ムカつくんだよ」

「ぃっ、た!」


 思わず、痛みで声がもれる。

 カレが言いたいことがわからなくて困惑するけど、ここで言わなくちゃって思い付いて、私は言葉を口にした。


「私、は……純さん、だけ、だから。――あの絵を見てくれたのは、純さん、でしょ?」


 今、その話をする時だと思った。

 美緒とも話したけど、この話をして、カレがどういう行動に出るか様子を見た方がいいって。
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