Liberty〜天使の微笑み


『……で、返事は?』

『…………』

『返事っ!』

『っ!…………わかっ、た』


 会話は、あきらかに威圧的な態度。それはまるで、自分の父親を連想させる物言いに、オレは言葉が出てこなかった。


「とまぁこんな感じ。ここまでバッチリ入ってるなんて、驚きだったわ」

「そんなの仕込んでたのかよ……」

「だって、言ったら幸希、顔に出るでしょ? まずは味方から騙さないと」


 まさかここまでしてくれるとは思ってなかったから、オレはもう頭が上がらなかった。すると鈴木さんは、何かあったら使えばいいと、オレにそれを手渡してくれた。


「でも、何かあってほしくないんですけどね」

「それが一番だけど、なかなか上手くいかないのが世の常だから」


 今のままなら、きっと、そーゆう事態があるのは否めない。

 無理にでも離したいけど……そこはやっぱり、市ノ瀬がどう思っているかだろうし。


「純哉は……別に紅葉ちゃんが嫌いじゃないんだろうけどさ」

「むしろ、依存してるわよね。でも、思い通りにならないと、それが許せない」

「だろうな。……朔、オレが前に言おうとしてたことだが」


 覚えてるか? と、幸希さんは聞く。

 前にって、ウソを付く心当たり、だっけ。

 聞くと、幸希さんは頷く。確信が付いたらしく、オレは話に神経を傾けた。





「アイツは……お前が憎いから、紅葉ちゃんと付き合ってる」





 オレが……憎い、から?

 一瞬にして、頭の中が真っ白になった。


「昔からだが、お前だけ何もされないのが、堪らなく嫌だったらしい。高校になった頃には、そんなことも言わず、むしろ弟思いだったが……今じゃあ、紅葉ちゃんが朔と一緒にいるだけで、ムカつくらしい」


 まさか……オレのせいで、傷付いてる?
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