二重人格
『いっぱい買っちゃったねっ』
ヒロキの右手左手には袋がいっぱいだった。
一着しか服を持ってなかったんだから仕方ないけど…。
「だなっ」
『けど、楽しかった♪』
そう言って買ってくれたパーカーの袋を抱きしめる。
「どんだけ気にいったんだよ、それ」
『だって、嬉しいんだもん…私、一回も誰かに服買ってもらった事ないんだよ!
昔は、お姉ちゃんのお古を着て、今は一人か友達と買いに行くでしょ?
だから人に買ってもらった事一度もないのっ』
「じゃあ、俺が第一号だなっ」
『うんっ』
「素直なやつ」
私の頭をポンポンと叩く。
『どこが?』
「だって、由里だったら俺が買っても素っ気ないしな」
平然とした顔をしながらショッピングモールの中を歩く。
『お姉ちゃんはクールだからねっ
大人なんだよ、私と違って』
私はそんなお姉ちゃんがうらやましかった。
格好いいししっかりしていて、私にないものを全て持ってる。