メリアと怪盗伯爵

「ぐすっ・・・」
 がっくりと項垂れたセドリックに、モールディング伯爵は苦笑いを浮かべながら説明を加える。
「セドリック。彼女はアダム・クラーク男爵の屋敷で侍女をしていたんだ。でも、ちょっとこの間お邪魔した際に僕とエドが余計なことをしてしまってね・・・。彼女がクビになった」
 なぜかはわからないが、明らかに七、八歳程の幼い少年が指を加えながらメリアの顔をまじまじと見上げてくる。

「・・・という訳だ」

 涙目をじっと細めてモールディング伯爵を見つめるセドリック。

「・・・今度はクビになった人間まで拾って来た訳ですね・・・」
 ぼそりと呟いたセドリックの言葉に、メリアがあまりのショックで顔が真っ白になる。

「拾ったんじゃないぞ、僕は彼女を”雇った”んだ」
 後ろからパチパチと手を叩く双子の女性達。白いエプロンをつけたまま、嬉しそうに歓迎の拍手を送っている。



「モールディング伯爵家の屋敷へようこそ!」
「わたし達は食事担当のリリー、サリーよ」
「どうぞ」
「よろしく」

 二人同時に見分けのつかない笑みで、リリーとサリーはメリアに左手を差し出した。

「メリアです、よ、よろしくお願いします・・・」
 
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