今度はあなたからプロポーズして









奈々子は
事務服から通勤時の私服に
着替えていた。





白の七分丈のシャツと
黒のスカートにパンプスが
長身の奈々子には似合っている。





当然と言えば当然だが、
恭一が覚えている高校時代と比べ
随分と大人っぽい格好だった。





「すっかり、東京人だな」




と恭一が言うと、





「恭くん…もね」





と改めてお互いの成長ぶりに
目を細める。





メニューを開けようとすると、





「ここ、何気にオムライスが
 美味しいのよ!」





と奈々子の奨めに乗って
店員にオムライスと
食後のコーヒーを二つ注文すると、





高校の頃も二人で喫茶店に来ては
よくこうして話していたなぁと
ふと記憶が蘇る。






恭一は目の前の菜々子を見て
勝手な満足感に満たされていた。





10年もの空白は
確実に時の経過を実感させる。





だが、お互いもまた確実に
成長しているのだ。





何をどう経験したかは知らない。





が、成長した姿で
こうして再会を分かち合えることに
色々と想像を張り巡らしては
勝手に満足して空白を埋めていた。











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