今度はあなたからプロポーズして








「私が今日という日を
 どんなに楽しみにしていたか
 恭一にわかる?

 平気で約束を破るような人に
 私の気持ちなんて
 わからないでしょうね………

 大体、恭一は仕事とわたしの
 どっちが大事なの??

 答えてよっ」




「仕事とお前って…
 そんなのどっちか選ぶってもの
 でもないだろう…

 なぁ、…勘弁してくれよ」




恭一は自分は悪くないと思いつつも
分が悪いと感じたのか、
申し訳なさそうに頭をポリポリ掻いては
苦渋の表情を浮かべてみせた。


が、相手は営業事務の留美だ。
どんなに顔を歪めようとも
通用するはずがなかった。

営業マンの演技だとばかりに
留美の態度は一向に揺るがない。



留美だって突きつけた天秤が
比べようのないものだとは重々承知の上だ。



だが、留美が納得いかないのは
比べようがないとはいえ
最初から仕事に比重を置いていることが
恭一の態度に安易に見て取れたからだ。


「仕事だから」といえば
何時なんどきも通用する、と。


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