部活~ウチらバスケ部~高校編      ファイナル

千奈の母は、手にしたハンカチで涙を拭うと


  「今まで、ありがとうございました。

   本当は、皆さんと一緒に高校を、
   卒業させてやりたかったのですが
   いろいろあって……、

   この子のおばあちゃんの所へ
   行くことにしました。

   本当に、皆さん、
   有難うございました」


深々と礼をする、千奈の母。

千奈は下を向いて立ったまま。


千奈の母は、顔を上げると、


  「では、この後の電車で行きますので。

   さあ、千奈」


そう言うと、千奈を促し、
タクシーに、乗り込んだ。

母に続いて、タクシーに乗ろうとして、
扉に手をかけた千奈が振り返り、皆を見た。


千奈「私、バスケット、続けるから。

   バスケットしてたら、
   また、会えるよね」


雅美「もちろん」


友理「うちら、仲間やん」


佐紀「どこへ行っても、
   それは変わらないよ」


千奈は、ありがとうと、言おうとしたが、
声が震えて、言葉に出来なかった。

代りに千奈は、ガッツ・ポーズをした。

声には出せなかったが、心の中で、
大きく、叫んだ。


   ”ヨッシ”


すると、皆から、声が返って来た。


  「ヨッシ」


千奈は、皆の気持ちの嬉しさと、
ここから離れなければならない寂しさで、
胸がいっぱいになった。

ぐちゃぐちゃの泣き顔を見られたくなくて、
タクシーに乗り込むと、顔を覆って、
泣き始めた。



千奈が乗り込むと、タクシーは発車した。

佐紀達は、そのタクシーが見えなくなるまで
じっと見送っていた。

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