キミ色
美波さんはずっと真剣に俺の話を聞いてくれた。
そんな美波さんが、俺の心を少しずつ溶かしていってくれているようだった。



ガチガチに固まってしまっていた心が、なぜか少しだけ柔らかくなった気がしたんだ。
美波さんには、心底全て話せるような…そんな気がした。



全ての話をし終えると、美波さんは加えていた煙草を揉み消し、言葉を並べた。



「そっか…、そんなことがあったんだ。」



俺は素直に首を縦に振った。




「…なんかさ、変だと思ったんだよね。ほら、あたし最初に言ったじゃない?“あんた、変わった”って。」



そう言えば、確かに言っていた。
俺が採用用紙に必要事項を記入してる時に、ぽろって…。



「何であんなこと…?」



「あんたの生意気度が違ったのよ。あたしが知ってる櫂は、もっと自分の考えに自信を持ってたから。でも、今年来たあんたは去年の櫂じゃなかった。」



去年の俺……?


思い出せない。
全く解らない。



去年の俺って一体どんなヒトだったんだろう─…?



「櫂…」


「……?」





「…逃げてちゃダメだよ─……」





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