キミ色
…蓮?


廊下に1人ぽつんと残る俺と、俺の手に包まれた水色の封筒。
廊下を走る蓮の上靴の音だけが響いていた。



変な蓮…。



佐倉 蓮(ハス)は…、あまりいいようには感じないかもしれないけど、一応俺の元カノにあたる存在。



皆には内緒で付き合っていたから、知ってるのは時雨と蓮の親友である若菜チャンぐらいだけど…。


5ヶ月ぐらい付き合っていたが、別れる時に蓮は、
『付き合ってなかったって事にしよう…』
と、小さく呟いた。


だから、元カノという表現はしてはいけないのかもしれない。


でも、俺はそんな風にはしたくなかったんだ。


何てったって、蓮は俺の初めての彼女だったから。
中学の時は、告白されても全部断っていた。
自分の心が不安定だったから…。


別れをきりだしたのは蓮。
初めてのヒトだったのに、全部消すなんて出来ないと想った。


だから、卑怯な手を使ったんだ。


『友達では…いよう?』
って…。


蓮は優しいから、頷いてくれたよね。


話せたら、それだけでいいと想ってた。
諦めの悪い、この腐った根性が俺を支配し続けていた。



でも、友達に戻るっていうのもそんなに簡単なものではなかった。
今までとは違う環境に、動揺する自分が隠しきれなくて…。



ようやくけじめをつけられるようになったのは、蓮に尚先輩という存在が出来てからだった。
そう、蓮に新しい彼氏が出来たのだ。
それを期に、俺達は友達という関係にやっと戻れたんだ。




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