キミ色
そんな事も今となっては良い想い出。
今は、蓮は時雨と同じぐらい大事な友達だ。



俺は水色の封筒に貼ってあるシールを剥がし、中にある便箋を取り出した。
やはりさっきと同様可愛い丸文字が並べられてある。



内容はこうだ。



「槻丘君へ
校舎棟の3階に来てください。
お願いします…。」




名前もなく、あるのはこのメッセージだけ。
今時、珍しく丁寧に手紙を使うなんて、少しだけ笑ってしまう。
口で言ってくれればいいのに。



俺は歩いていた方向を変えて、携帯を取り出した。
着信先は、勿論時雨だ。



さっき、あんだけ喜ばしといて悪いけど、行ってあげないとこの子が可哀想だろ?



《プッ…もしもし?》


《―…もしもし、櫂!!?お前今どこに居んだよ!!?》


《悪りぃ、今日やっぱ行けねぇわ…》



《えー!!俺行く気満々だったのに!!》



《悪りぃな。じゃ、切るわ。》



その言葉を最後に電源ボタンを押し、会話終了。
こっちから切らないと、時雨は永遠に話し続けるから…。


悪い…、ごめんな時雨。
また、今度奢るから。


電話をしながら階段を上っていると、すぐに3階についた。


まだ3時頃なのに薄暗い廊下。
何とも気味が悪い。


俺はそんな暗い廊下を音をたてて歩きだした。




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