すべては数直線の上に+詩集
彼がこちらを向いて続きを話し始めたとき、ユウタは彼の表情がやはり暗くなっていたことを知った。
彼の顔全体を悲しみが包み込んでいるように見えた。
彼のオレンジ色に近い瞳に涙が滲んでいるようにも見えた。
ユウタは何も言わず、いや、何も言えず彼の話をひたすら聞くこととなった。

「初めて会ったのに、なんかすみません。実は一昨日彼女が死んでしまって...。病気だったんです。半年前くらいからずっと入院してて...そして一昨日亡くなりました。まだ20歳ですよ...早すぎますよね?」

そう話す彼の目から涙がこぼれ、雫は頬をつたって地面に落ちた。
ユウタはそれを見ていた。

「彼女とは高校の頃からだから、もう三年ほど付き合っていました。半年前に入院したときも、彼女は、すぐによくなるよと言ってお見舞いに行った僕を励ましてくれました。僕がよほど心配そうにしてたからでしょうね。僕が励まさなきゃいけないのに、それじゃあどっちが患者か分からないですよ。」

彼はユウタを見て一呼吸おいた。
ユウタが話を聞いてくれているか、退屈していないかの確認の意味もあったのかもしれない。
ユウタは彼を見て頷いた。
大丈夫、ちゃんときいているよ、というように。
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