シャイニング・ライト
 晃の中に、憎悪にも似た感情が込み上げてきた。しかし、それは何か行動を起こすま

での感情は込み出てこない。というよりは、奴らにびびって憎悪が押さえ込まれている

のだ。それでも男なら何か行動を起こさなきゃならないというのは分かってる。

 でも身体はそれを拒否するのだ。頭では分かっていても身体には伝わらない。動けな

い・・・。自分の中で湧いた憎悪は、消えそうになる位までくすぶってしまっていた。

 ふと、ひと筋の涙が頬を伝った。自分が一番驚いた。-不意の涙だった。

 -今まで泣いた事などなかった。それは負けだと思っていたからだ。-なぜ?限界を

超えてしまったのか・・・。

 晃の意識は、中里が押し付けてきた汚い雑巾で現実に戻された。

「俺って優しいだろう、ふいてやるぜ」

 と、中里は晃の顔をゴシゴシと雑巾を押し付ける。呼吸も出来ないほど押し付けられ

た晃は、必死にもがき、やっと離れた所を腹を叩かれた。苦しさで腹を押さえながら、

口を開く。その瞬間雑巾を口に押し込まれた。

 「ぐっ・・・ぶはっ・・・・・!!」口の中に何とも言えない臭気が襲い、吐き気を

もよおした。やっとの思いで雑巾を吐き出すと、奴らが腹を抱えて爆笑し、他のクラス

メイト達は見て見ぬふりを続ける。誰も面倒ごとには巻き込まれたくないのだ。ちらち

らこっちを見ては冷笑するだけだ。

 「やだぁ~汚~い」と、一部の女子達が笑う。その女子グループの中の野沢亜佐美

が、「中里、雑巾で顔拭いたら悪い顔が余計に悪くなっちゃうでしょ」

 「おーそうだな、ゴメンゴメン。伊藤のルックスがこれ以上醜くなったら大変だもん

な。生きていけないよなー」

 中里が、晃の肩を叩きながら言った。

  [・・・・・・・。」

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