Honey Bitter
「………あ、」
赤く、濃い血が私の手の筋を通り、空中へと放り出される。
そっと手に視線をやると手は手首から出た鈍い赤で甲全体が染まっていた。
どうやら、未だに手首から出ていたらしい血が地面に向かって落ちたようだ。
真っ暗な中、
ほぼ無意識に、落下していく血を目で追うけれど物の数秒で見失ってしまった。
「…………、え」
血を追う延長線上で暴走族の中の1人がふいにこちらを見上げていた気がする。
そんな訳ないのに、何故だか目と目が、ばっちりと合った気がした。
「……、」
そんなはずはない、ここはビルの10階だし、私は少ししかビルの端から顔を出していない。
―分かる筈がない、