Honey Bitter

バイクの音は着実に小さくなっていって、私は自分の耳を塞ぐ手の平の力を弱める。




周りは暴走族が来る前の、私がここに来てすぐの時の様な静けさを取り戻していた。




カツン、カツン、カツン。




わざと足音をさせて、ビルの端に近付いく。私の足音はほんの少し空に響いた後、闇に飲まれる。




遥か下に見える駐車場に視線を向けると、50台以上は止まっていたバイクも今は1台も残らずに無くなっていた。




ビルと空中の境のギリギリに立ち、静かに目を閉じる。




生暖かいような、冷たいようなどちらともいえない空気を吸って、ゆっくりと、吐く。




そっと、閉じた瞼を開いた。




キラキラ、キラキラ。




月は今日も綺麗に輝いている。




―やっと、やっと




今度こそ、死ねる。



< 13 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop