Honey Bitter
手首から、とめどなく溢れ出す鮮やかな赤。
透明な水は密度の濃い赤に容赦なく染まっていく。
これだけ血が出てるのに死ねない。人間の頑丈さに少しだけ感心してしまう。
蛇口から出る水で溢れ出る血を流して、重たい足取りで玄関に向かう。
"死ね"とやけに冷たい、聞き覚えのある声が頭の中に響く。
ガチャリ
私以外誰1人としていない家の玄関を静かに開けた。
ミーン、ミーン、ミーン
現在、am.2:00
夜中なんて事は関係なく、蝉はただ何かを主張するように鳴き続けていた。