Honey Bitter

手首から、とめどなく溢れ出す鮮やかな赤。




透明な水は密度の濃い赤に容赦なく染まっていく。




これだけ血が出てるのに死ねない。人間の頑丈さに少しだけ感心してしまう。




蛇口から出る水で溢れ出る血を流して、重たい足取りで玄関に向かう。




"死ね"とやけに冷たい、聞き覚えのある声が頭の中に響く。




ガチャリ




私以外誰1人としていない家の玄関を静かに開けた。




ミーン、ミーン、ミーン




現在、am.2:00




夜中なんて事は関係なく、蝉はただ何かを主張するように鳴き続けていた。


< 2 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop