Honey Bitter

ビルの端で目線を下におろすと、遠くに真新しい駐車場が見える。




思っていたよりもビルの10階は高くて、ほんの少しだけ目眩がした。




そっと、目線を上げれば月は何かを導く様に輝いている。




「………綺麗」




まるで私が死ぬ事をわかっていた、とでも言うように、私に満月を見せてくれる。




月は、誰にだって優しい。




私の様な、心に大きな穴の開いた人にだって、全身を闇に染めている人にだって、




みんなに平等だ。




太陽は、光には手の届かない事を再認識させられているようで私には眩しすぎる。




願う事許されるなら私も、太陽の様な暖かい光の中に生まれて来たかった。




「……なんて、ね」




叶わないであろう願望に、思わず自嘲気味に口角だけを上げた。



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