Honey Bitter

「………はぁっ」




脳に酸素が足りなくなり、窒息してしまいそうになって思い切り息を吐いて、吸う。




ビル10階分の階段を自力で上るのは、体力皆無の私にはかなり厳しい。




息を整えて、再び階段を上り始めればすぐそこに空が見える。




視界を遮る物が無くなり、見上げた空は暗闇に慣れた目にはやけに明るく見えた。




そっと、何かに導かれるように目を閉じる。




生暖かい風が長く黒い髪を靡かせ、頬をかすめた。




「やっと……、解放される」




ポツリ




いつの間にか呟いた言葉に今更ながら実感が湧いてきた




私はやっと"死ぬ事"が出来るんだ、と


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