空と砂と恋の時計
「ご、ごめん」
「あっ、いえ。ちょっと強く握りすぎちゃいましたか」
「違うの。ごめん。私、これからは教室で食べる事にしたから」
「どっちの?」
「どっちのって、何が」
「俺の教室? それとも百合さんの教室? 百合さんの教室だったら、先輩達から睨まれそうでちょっと気まずいな。でも、俺の教室だったら百合さんが気まずいだろうし。やっぱり屋上で食べませんか」
どうして貴志は、さも当たり前のように私が一緒にいると思ってるんだろう。
普通、気付かないかな。
言いたくないな。でも、言わなきゃ。
「聞いて貴志。私はもう屋上で食べないんじゃなくて貴志と一緒に食べたくないの。だから、ごめんね」
「えっ、ちょっと待って下さいよ。どうしてですか。俺、何か百合さんを怒らせるような事しました?」
「ううん。貴志は何も悪くないの。悪いのは勝手に勘違いしてた私だから。――貴志って彼女いるでしょう?」
「えっ? はい。そりゃ勿論。今も――」
「だからよ。ゴメンね貴志。本当はこんな事言いたくないけど、もう私に話掛けないで」
「訳、分かりませんって」
貴志の目が少し鋭くなる。
怖い。確かに貴志が怒るのも無理もない事だ。
簡単な話、彼女がいるなら私には望みがないですからもう会いたくないですって言ってるような物なんだから。
何て身勝手な女なんだ私。