空と砂と恋の時計


香里には怒られた。真紀には笑われた。景子には遊ばれた。キスの現場を目撃していたクラスメイトには思いっきり冷やかされた。

そして、先生には保護者報告なしを条件にたっぷりとお説教をされた。

校門へと続く長い坂道を貴志と一緒に歩く。

私の方は散々な目にあったと言うのに貴志の方はクラスメイトから祝福され、来年めでたく定年の担任からは「若さとは宝石の様じゃのぉ。ふぉっふぉっふぉっ」と笑われただけ。不公平だ。

坂道の終着を見上げると、すぐそこには見慣れた学校がある。

貴志は話が好きらしく、登校最中ずっと喋りっぱなしだった。雑学も豊富で会話が止まる事がない。

取り止めもないのない無駄話も貴志と一緒なら私にとっては幸せの欠片だった。


「ねぇ、前から思ってたんだけど、そろそろその敬語止めにしない?」

「敬語ですか? でも百合さんは先輩ですし。後輩が先輩に敬語使うのは普通かと」

「私は貴志の先輩じゃなくて彼女でしょ。彼氏彼女は同等が良いの」

「それって例えばですけど、母親だから女じゃないって言ってるようなもんですよ」

「え……もしかして貴志ってマザコン?」

「何処をどう解釈したらそんな結論に至るんですか。俺が言ってるのは上下関係なんて最初っからないんだから今更、変える必要もないんじゃないかって話です」

「ん~……それもそうかも」


言葉使いが違っただけで、何かが変わるわけでもないからな。

あ、でも新鮮味はあるかもしれない。



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