純恋〜スミレ〜【完】

一体どこへ向かって歩いているんだろう。


あっちには駅前公園しかない。


もしかして……――


もしかして優輝は駅前公園に向かっているの……――?


二人が付き合い始めた、あの公園に……。


……ううん、違う。そんなはずがない。


そんなのあたしの勝手な思い込み。



「……――待って」


少しでも気を抜くと、優輝との距離が開いてしまう。




その時、ふと気付いた。


優輝がいつだってあたしの歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれていたことに。


一人で歩く優輝に追いつく為に小走りになるあたし。


歩幅の違う二人で歩けば、どちらかが相手のペースに合わせなくてはいけなくなる。


あたしは優輝と歩いている時、一度だって息を切らしたことなんてない。


ペースを合わせたことなんてない。


ああ、そうか。


優輝はいつだって、あたしのペースに合わせてくれていたんだね。


どうしてこんな時に気付いてしまったんだろう。


優輝の何気ない優しさに……――。




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