純恋〜スミレ〜【完】
「今の男に飽きたら、いつでも俺のところに戻ってこいよ?」


「……達也のところにはもう戻らないよ」


口の端をクイッと上に持ちあげて笑った達也を真っ直ぐ見つめる。


ほんの少しの沈黙がとても長い時間に感じられて。


「純恋、お前変わったな?」


すると、達也はフッと笑った。


「……あたしが変わった?さっきは変わらないって言ってたじゃん」


「口では何て言ったらいいのかわかんねぇけど、変わったよ」


「それは、いい意味で?それとも悪い意味で?」


「いい意味で」


達也はそう言うと、車のカギを指でクルクルと器用に回した。


「……今まで、悪かったな。幸せになれよ?」


聞き取れないほど小さな声で謝ると、達也はあたしに背中を向けて歩き出した。



もう、いいよ。


あたしはその後ろ姿に、心の中でそっと声をかけた。
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