失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】

悪魔の堕落




聴かれて…た…?

あの狂った宴を

この人に…




「聴いた…の…?」

身体が急に寒くなってきた

彼は懐かしい思い出を語るような

微笑みを浮かべていた

だがそれはある種の自嘲にも見えた

「久しぶりだったな…あの焼けるよ

うな嫉妬の焦燥…それから君への

激しい欲情…それよりなにより…私

は君の死ぬさまをそこで座ったまま

聴かされるかもしれないというその

状況…あの時は恋人の死に立ち会え

なかった私が今度はそれをリアルタ

イムで実況されるのかと思うと…我

ながら愕然としたよ…望みが叶うと

いうことがこんなに皮肉で凄惨なこ

とだとはね…皮肉というには素晴ら

しいほどの破壊力とねじれだと」

ははは…と彼は笑った

あまりに素直過ぎる告白に

今度は顔が熱くなった



だけどそうなんだ

その裏腹さがこの世の理

期待して願いを込め

そして…不意に打ち倒される

だが無心に手を離し

死を覚悟したとたん

悪魔にすら救われる

あなたも…僕も…




「君は私に予測不可能な感情を連れ

てくるんだ…違和感…異物感なのか

こればかりはいたたまれない」

「前も…言ってたね…」

そう…あの時はなんて言われたっけ

「はた迷惑なアトラクション」

彼は即座に答えた





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