失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「盗聴器で君の声を聞いた時と同じ
いや…それ以上に私は嫉妬と激しい
欲情を同時に感じた…君の悶絶する
画像を何度も繰り返し見ながらその
夜ベッドの中でどれだけ絶頂を味わ
ったことか…君はまた真っ白だった
なぜ汚れないのか私にはわからない
…あの男は君の白さに犯されて無残
だったよ…苦しんで苦しんで苦しみ
続けた…君をけがして黒く染め貶め
ているはずなのに…気づくといつの
間にか君から侵食されてる…私には
あの男の気持ちが手に取るようにわ
かる…そうそう…」
彼はフッと笑い椅子に座り直した
「あの男はいま県警に拘留されてい
る…前科もあるし覚醒剤取締法違反
と銃刀法違反に公務執行妨害…傷害
罪それから人身売買…余罪は他にも
まだあるだろう…それでも終身刑に
はならないな…いつかは出てくるだ
ろう…司法取り引きに応じればさら
に刑期も短くなるかも知れない」
彼は僕にほほえみかけた
「どうだ…聞きたかったんだろう?
あの男がどうなったか…」
彼は急に椅子から立ちあがると
ベッドに腰掛け
僕の顔の両脇に両手をついた
僕の顔の真上から
彼は僕を見下ろしていた
「愛してるのか?…あの男を」
彼は変わらずほほえんでいた
それが僕にはとても怖かった