失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



十数分後

僕と彼はあのパーキングにいた

彼が窓を開けると潮の匂いがした



玉久司島

僕の大事な場所

こんな形でまた来てしまうなんて…



「あなたと…また…来るなんて…」

シートで僕は独り言みたいに呟いた

「そうか…覚えていたか」

あの時のように彼が運転席で答える

「そのあと…偶然…ここに…お参り

に来ちゃった」

バンドのみんなとここに来たことを

ポツリポツリと彼に話した

「まるで呼ばれたようだな」

彼は渋い顔でそんなことを言った



また夕暮れだ

本当のデジャブみたいに



「…行くか」

彼はそう言うと突然ドアを開けた

「どこに?」

彼は車を降り助手席側に回った

ドアを開かれる

「降りろ…君に仕事をしてもらう」

「そ…外でするの?やだよ!」

僕は真っ赤になって身を引いた

「…違うぞ…神頼みだ」

「はあ?」

耳を疑うような言葉が

彼の口から出た

「犯すのは後だ…いま思いついた」

僕はなにがなんだかわからないまま

彼に手を引っ張られて車の外に

引きずり出されていた





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